症状・治療について
クエスチョンカード
[2022.12.01] 基礎後期産業医研修会参加⑤new


2022年9月4日(日)、令和4年度第1回基礎・後期産業医研修会午前の部へ参加しました。

琉球大学大学院精神病態医学講座の近藤毅教授による「産業保健における神経発達症の理解」では、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠陥多動症(ADHD)とうつの関係、最後に脳機能からみたASDとADHDについて最新の知見を教えて頂きました。

ASDでは場や空気を読んだ対応ができない、集団における協調的交流が苦手であるなどの社会的相互作用の障害、言外の意味が分からない、非言語サイン(表情・口調)を察知できないなどのコミュニケーションの質的障害、新規・変更状況に弱い、独自のルールやこだわりが多いなどの反復的常同行動/興味の限局が特徴であり、有病率は小児1.47%、成人1%(男性:女性=3.3:1)で、1割が自閉性障害、3割がアスペルガー障害、6割は特定不能のASDと言われています。

また5割が気分障害や不安障害、4割がADHDを合併しており、併存精神疾患やパーソナリティ障害にマスクされがちであり、初診でうつ病と診断された患者さんの16%にASDが合併していたとのデータがあります。初診時20-30代など年齢が若い、結婚してない、身体疾患が少ない、不登校や被いじめ体験、精神病用体験、自殺関連行動、対人トラブルが多いなどの背景があり、逆にこれらの因子が一つもない症例ではASDをほぼ否定できるそうです。

営業、サービス、流動的現場、クリエイティブな作業などの仕事のミスマッチ、無視、陰口、からかいなどの同僚からの冷遇、低評価、批判、叱責などの上司からの誤解などから不適応となる傾向がありますので、産業保健においてはASD特性の認識・受容し、心理教育、状況分析を行い、併存するうつ状態などには積極的治療を行う、良きtranslatorであること、良きinstructorであることに徹し、洞察を志向する力動的精神療法や認知療法ではなく、適応を志向する行動療法や支持的精神療法を選択し、周囲への心理教育や対応指示など環境調整を行っていくことが重要です。またASDのうつ病では自殺リスクが高く、縊首などの手段を選びやすいなどのデータがあります。

ADHDの症候としては、不注意と多動ー衝動に分けられ、それぞれ9つ中5つの症候が幼少時から見られることが診断の基準となります。幼少時では5%、大人でも2.5%にADHDの方がおられますので、小学校40人クラスに2人程度いる頻度です。成人ADHD診療において留意すべき4Cとは、

Comorbidity:適応障害、不安障害、気分障害、各種嗜癖などの並存疾患による受診で訪れることが多いため、ADHDを見出すことが重要
Concern:仕事・生活上の問題、対人関係の不安・トラブルなど現在の困りごとに焦点化し機能障害として捉えること。
Complex:学業不振、留年、頻回な転職、軽率なミス、時間の不遵守など劣等感の元となる過去を知り、挫折に共感的に対応すること
Continuity:母子健康手帳、通知表、連絡帳、第3者からの聴取などで幼少期からの連続性を確認すること 

Concernにおいて機能障害を拾うADHDの困りごと3Tとは、
Task(遂行機能障害):学業や家事で困っているか質問し、取り掛かれない、仕上げられない、同時並行できないなどの訴えがあれば、Single task、Double checkを原則とする。
Time(時間管理障害):時間の使い方について質問し、期限に間に合わない、時間を守れない、配分できない、先延ばしにするなどの訴えがあれば、To do list、Weekly scheduleを視覚化する。
Tolerance(報酬系の障害):決断や行動の面で我慢が利くか質問し、努力・我慢が苦手、はやりやすい、拙速に判断しがち、よく考えずに動くなどの訴えがあれば、報告・連絡・相談、目標設定の明確化を徹底する。

ADHD的働き方を周囲に貢献できるから働き方へ変える手法として、
計画性の乏しさ(その場しのぎ・なりゆき任せ)「やってみたことが沢山あります」→「To do list」「Weekly schedule」「Deadline」
注意・集中の不足(移り気・ケアレスミス)「ぶっ続けても大丈夫です」→「75%でやって下さい」「確認作業をよろしく」
完遂が困難(やりっ放し・ほったらかし)「」→「一つを片付け終えてから次に行く習慣を!」
衝動的な決断(独断専行・猪突猛進)「」→「言う前に書き出してみる」「対案も用意しておく」
単独行動の傾向(チームワークを乱す行動)「」→「それでは、報告・連絡・相談で」
努力、忍耐力を嫌う(あきっぽさ・サボタージュ)「」→「長期目標も作る」「継続した後でご褒美を」

明日からも最新の知見を当院通院患者さまへお伝えしていきたいと思います。

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[2022.09.01] 基礎実地産業医研修会参加②new


2022年4月24日(日)、広島県医師会主催令和3年度第3回基礎・後期産業医研修会午後の部へ参加しました。

産業保健コンサルティングアルク(株)代表取締役の梶木繁之先生による「嘱託産業医のための高ストレス者に対する医師面接について~マニュアルを用いた実地研修~」の2時間の講義を拝聴しました。

平成26年労働安全衛生法により職場でのストレスチェックが義務付けられ、平成27年に同法に基づくストレスチェック制度実施マニュアルが策定され、令和3年9月に同マニュアルが改定されてます。職場でのストレスチェックは年1回①心理的な負担の原因に関する項目 ②心理的な負担による自覚症状に関する項目 ③他の労働者による支援に関する項目について57項目版(P34-35/185)、または23項目の簡易版が提供されており、性格検査、希死念慮、うつ病検査は不適切な項目とされていますが、事業者が未受検者名簿を得て労働者に対して受検を奨励することは可能です。高ストレス者とは心身のストレス反応が高い、もしくは仕事のストレス要因(サポート不足を含む)のいずれかもしくは両方に該当するもので、高ストレスと判定された男性労働者は高ストレス以外の労働者の6.6倍、女性で2.8倍が1年以内に疾病休業に至るとのデータがありますので、産業医はストレスチェックの結果を分析し、面接を行いケアすることが必要です。

ストレスプロフィール (P40-42/185)では個人ごとのストレスの特徴や傾向を数値、チャートなどの図表で示したもので、高ストレスに該当するかどうかや面接指導の要否を判定したり、労働者がセルフケアを行う際のアドバイス、面接指導の申出窓口や申出方法などを助言でき、5年間保存義務がありますが、本人の同意がなければ事業者には提供されません。後半はストレスチェック制度実施マニュアルに沿った約20分間の模擬面談ビデオを視聴し、模擬医師の対応についてディスカッションしました。ストレスチェック制度実施マニュアルには、高ストレス者本人が記入するものとして高ストレス者性格チェックシート・体調チェックシート・生活記録表(行動記録表)、高ストレス者が所属する部署の上司が記入するものとして業務状況シート、高ストレス者の対する面接指導で医師が使用するものとして抑うつ症状の確認・面接ステップリスト、就業上の配慮に関する意見書の例があります。ストレスチェック制度実施マニュアルは、以下の3つのパートに分かれています。

① 高ストレス者への全般的(原則的)対応として、現状では高ストレス者の1割程度しかない面接指導の申出割合を上げるため、高ストレス者性格チェックシートを送付したり、判定表を参考に自身の性格傾向を把握してもらい、対応を取るように促します。

② 高ストレス者に対する面接指導や自主対応(セルフケア)の勧めとして、ストレスチェック実施者から対象者への意向確認・事故対応(セルフケア)のための資料の提供・産業保健スタッフ(看護師、カウンセラーなど)による相談対応・就業上の配慮に関する面接指導などがあります。認知行動療法研修開発センターeラーニング、UTSAMeD-うつめど、こころの耳などではインターネットで認知行動療法を体験したり、ストレス対処法について自習できたりする情報が掲載されており、自主学習を促すツールとして紹介します。

③ 高ストレス者に対する面接指導と事後措置として、以下に示す面接の流れステップ①~⑨に沿って行っていきますが、全般的な留意点として、精神的、こころ、うつといった用語には抵抗をもつ対象者が多いため基本的に使用せず、体調、負担、ストレスといった一般的な用語を用いること、アクティブリスニングの技法でもある対象者の言葉を繰り返すことによりラポールを形成すること、少し前傾姿勢で傾聴、共感していることを対象者へ伝えること、できるだけニュートラルな表現で対象者が自分の思うことを回答できるオープンクエスチョンで質問をすること、対象者の決定を尊重し、産業医の責任を果たすために受診勧奨自体は行い記録しておくことなどです。

ステップ1:自己紹介、ねぎらいの言葉・アイスブレーク、対象者の所属部署・職位の確認による導入

ステップ2:面接の理由、内容・目的、個人情報の取り扱い、面接後の対応、会社への報告についての説明、質問の確認

ステップ3:過去の高ストレス状況の確認

ステップ4:ストレスチェックの振り返りと確認の説明、ストレスの原因と考えられる要因の説明、ストレスによっておこる心身の反応の説明、ストレス反応に影響を与える他の要因の説明

ステップ5:うつ症状を確認する質問、うつ商法の回答に関する判断、うつの症状以外の体調不良の確認

ステップ6:現病歴・既往歴、残業時間・休日出勤、酒・タバコの習慣と最近の傾向、休日の過ごし方、ストレス発散法、家族との関係

ステップ7:ストレスの業務上の要因に関する対象者自身の考え、業務上の背景要因の確認、業務上の背景要因の継続性の確認、仕事のやりがいの確認、業務外の背景要因の確認

ステップ8:ストレスの背景要因のまとめ、ストレスへの対応についての話し合い、産業医からの提案、高ストレス者性格チェック氏との振り返りと自習サイトの情報提供、受診の勧奨

ステップ9:報告書・意見書の内容と今後の対応の確認:対象者と相談しながら報告書・意見書を作成することの明確化、ストレスの要因の再確認、対応策の提案、支援目的の明確化、報告書の内容の確認、今後のフォローの確認、対象者からの付け加えの確認、必要時の連絡の指示

明日からも最新の知見を当院通院患者さまへお伝えしていきたいと思います。

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[2022.08.01] 基礎実地産業医研修会参加①new


2021年12月12日(日)、広島県医師会主催令和3年度第3回基礎・実地産業医研修会へ参加しました。

日本労働安全衛生コンサルタント会広島支部の厚東哲郎先生による「~工場・事業場での昨今の関心事~環気汚染対策(換気)&事故対策パワハラ対策」の2時間の講義を拝聴しました。

人間は酸素を吸って二酸化炭素を排出するので、1m3の空気中で3時間しか生きられません!

通常の空気中には二酸化炭素は0.035%(350ppm)程度存在しますが、0.5%で長期安全原価TLV-TWA(平均許容時間8時間の時間加重平均限界濃度)、3%で体重、血圧、心拍数に変化が出始め、5%で重度のあえぎで耐えられなくなり、10%で約10分で意識不明、25~30%で数時間で死に至りますので、閉鎖空間で人間が過ごすには換気が必要です。


必要換気量の計算方法には以下の3つがあります。

① 一人当たりの占有面積から求める方法として、「20x居室の床面積(m2)/一人当たりの占有面積(m2)」と定められており、一人当たりの占有面積の基準値は建築基準法で旅館・ホテルは10、病院・療養所は5、百貨店は2として計算します。

② 部屋の換気回数から求める方法として、「毎時必要換気回数(回/h)x部屋の容量(m3)」があり、衛生試験所の経験から一般家庭は6回、ホテルは10回、工場は20回で計算します。

③ 収容人員から求める方法として、「一人当たりの必要換気量x人数」があり、日本建築士連合会により会議室は85、レストランは25.5、病院は34から計算します。

機械換気の分類としては大きく3つに分けられ、

第一種機械換気は、送風機と排風機両方あり正圧で確実な換気量を確保できるので大規模な工場などで使用されています。

第2種機械換気は、送風機と排気口があり正圧で汚染空気の流入を許さない清浄室、手術室などで使用されています。

第3種機械換気は、吸気口と排風機があり負圧で他に汚染空気を出してはならない汚染室、伝染病室、トイレ、塗装室などで使用されています。

換気装置のメカニズムによる分類として、

局所換気は効率の良い囲い式フード(ブース型)ややや効率の悪い外付け式フード(側方吸引)により周囲まで汚染される危険が少ないなどの長所がありますが、設備が大掛かりで場所を取ったり、設備コスト、運転コストが大きく作業性を損なうことがあるなどの短所があります。有機溶剤蒸気の発散源対策では有機則第5,6条によると、囲い式フードの制御風速は0.4m/s、外付け式フードは0.5m/sとされ、粉じん対策では粉じん障害防止規則で囲い式フード0.7m/s、外付け式1.0m/s、定期自主検査は年1回、記録の保存は3年、清掃は1日1回、堆積粉じんは月1回と定められています。

ブッシュ・プル換気は排気と吸気を水平流や垂直流で行うもので立ち入れる構造が可能ですので作業性を損なうことが少ない長所がありますが、設備が大掛かりで場所を取ったり、設備コスト、運転コストが大きい短所があります。

全体換気は作業場全体を第3種機械換気により換気するもので、設備コスト、運転コストが小さく設備が簡単で場所を取らないし作業性も損なわない長所がありますが、効率が悪いため周囲まで汚染される危険があり、排気の処理もできない欠点があります。


続いて事故対策については、ヒューマンファクター(人間の行動特性)である「錯覚」「不注意」「近道行為」「省略行為」の4つに代表される人間の行動特性のうち、特に意図しない行動の結果、異常な状態、事故、災害につながった要因をヒューマンエラーといいます。ヒューマンエラーを防ぐには

(1) うっかりミスを減らす:手順の確認、日常訓練などにより、慌てるような作業状況を作らない・業務中スマホをOFFにするなど、同時にいくつもの仕事をしない・30分ごとに小休止などをとるなど注意力は持続しないことなどによりうっかりミスを防ぎます。

(2) 錯覚を防ぐ:情報を重複させたり、視覚と聴覚両方で知らせるなど情報の伝え方を工夫する・赤は禁止、黄色は注意、青は安全などデザインを工夫する・指差し呼称など危険予知を行う。

(3) 近道・省略行動は事故の元-危ない、でも急ぎたいー:安全確保のために決められたルールや手順を省略しないよう作業手順を作る。

(4) 慣れ:仕事に慣れてきた頃に手順書無視の手抜き作業が増えるため、経験5-10年で原点に戻りルールを守る。

(5) あせり(異常時):普段あまり経験していない異常が起きると時間的に切迫しあせり、あわてる、という心理状態になるため、まず冷静に深呼吸をして、一呼吸置く・以上を想定した訓練を行う・異常はきちんと報告し、手順を作り再発を防ぐ。


パワハラ対策については、怒りと上手に付き合うアンガーマネージメントとして、

(1) 衝動は6秒我慢:怒りを感じたら頭の中で1から数をかぞえる・深呼吸をする・その場から離れる・自分に言葉をかける・考えることをやめる。

(2) 不要な~べきを手放す:怒りは自分が信じている「こうあるべき」という価値観が破られた時に生まれるため、本当にそれは今こだわらねばならない事なのか、イライラしてしまう自分の中の境界線を洗い出してみる。

(3) しょうがないことは割り切る:自分の怒りによって変えられることと、変えられないことがあることを理解しておくことも大切なので、「相手は変わらない、変われるのは自分だけ」・自分にコントロール不可能なことは「まあしょうがないよね」と割り切って自分ができることに集中する。

明日からも最新の知見を当院通院患者さまへお伝えしていきたいと思います。

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[2022.05.01] 基礎後期産業医研修会参加④new


2021年11月28日(日)、広島県医師会主催令和3年度第3回基礎・後期産業医研修会午後の部へ参加しました。

大同特殊鋼(株)統括産業医星崎診療所長の斎藤政彦先生による「最近の労働衛生関連法規の改正と産業医の実務~嘱託産業医として知っておきたい事・気を付けたい事~」の2時間の講義では、産業医業務はすべて労働安全衛生法に基づいているとの内容でした。

同法によると、事業者は産業医を選任する義務があり、厚労省から認定を受けた産業医は、事業者からの依頼に応じて健康診断、長時間労働者に対する面接指導、作業環境管理、健康管理、衛生教育など、労働者の健康管理を行うと記載されており、主役はあくまで労働者と会社であり、労働安全衛生法上の責任がなく事業者へアドバイスすることが仕事の産業医はあくまで脇役ということになります。

また産業医が行う面接指導についても、同法第52条で規定されており、労働者の勤務状況、心理的な負担の状況、心身の状況から産業医が面接指導を行い、事業者は産業医の意見を勘案し、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講じ、労働者の了解が得られるよう努め、不利益な取り扱いにつながらないように留意しなければならないと記載されています。

平成27年の同法の通達では、面接指導は原則として直接対面によるが、事業場の産業医がセキュリティの確保されている映像と音声の送受信が安定かつ円滑にできる情報通信機器を用いて面接指導を行っても直ちに法違反ではないと記載されました。

労働安全衛生法第十三条には、産業医は労働者の健康を確保するため事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができ、事業者は勧告を尊重しなければならないと記載されています。同法の答申によると、産業医が勧告権を行使しうるのは、①労働者の生命若しくは健康に重大な危険が及んでおり緊急回避が必要なとき、②労働者の生命若しくは健康に重大な影響を及ぼすことが予見されるとき、③事業場の衛生環境や労働者の健康に関する重大な法令違反が認められる時、④事業場の衛生環境改善や労働者の健康確保のために経営的な判断がなければ解決でいないときであり、勧告権は日常的に行使されるものではなく特別な手段であること、丁寧に事前説明すべきであり、文書化し衛生委員会で直接説明し、手続きなど社内規定に従い、職業倫理に照らして躊躇なく行使すべきとのことです。


引き続き東海大学医学部基盤診療学系衛生学公衆衛生学の立道昌幸教授による「職域でのがん対策の必要性と産業医の関与」の2時間の講義では、労働者が癌に罹患した際に必要な知識や、癌を積極的に予防していく方法など具体的に教えて頂きました。

大規模なメタアナリシスで夜勤労働者の乳癌発症率が1.3倍、前立腺癌発症率も1.34倍になるとのデータが紹介され、IARCによる発がん物質分類で2Aにランクされていますが、実際は1のランクのレベルです。今後テレワークが増え座位時間が延びると大腸がんの発症も増えるのではとのことでした。

現在は65才までに15%が癌を発症ししており、平成30年3月に厚労省より第3期がん対策推進基本計画が発表され、①がんの予防 ②がん医療の充実 ③がんとの共生 ④がん教育・研究・人材育成などの目標が設定されました。現在すべての癌の10年生存率は60%に達していますが、15%は今の医療で予防、治療が可能な癌だそうです。人口寄与危険度割合(PAF)では日本人における癌の原因のトップが喫煙であり、禁煙対策はがん対策の一丁目一番地であり、コロナ禍で閉鎖した喫煙所を再開させないことが必要とのことです。飲酒習慣をやめることにより食道がん、肝がんを予防することができ、ピロリ菌は胃がんの原因の90%を占めており、腸上皮化生前に除菌すれば95%予防できるため、30代までにピロリ菌除菌することでポイントであり、肝炎ウイルスも肝がんの85%がB型、C型肝炎が原因であり、インターフェロンなど最近の治療で根治可能になっています。またHPVヒトパピローマウイルスによる子宮頸がんもワクチンで予防可能であり、低下しているワクチン接種率を上げていくことが重要です。

一人の命を救うのに必要な健診者数を示す、NNR(number needed to recall)では、大腸がん患者一人を救うのに便潜血検査だと300-500人、大腸内視鏡検査だと300人必要とのデータから、大腸がんの検診は便潜血で十分との結論になります。従業員全員がきっちりと健診を受け、健康についてしっかりと教育していくことが重要とのことでした。

明日からも最新の知見を当院通院患者さまへお伝えしていきたいと思います。

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[2022.04.01] 基礎後期産業医研修会参加③


2021年11月28日(日)、広島県医師会主催令和3年度第3回基礎・後期産業医研修会午前の部へ参加しました。

広島労働局労働基準部健康安全課の高松達朗課長による「最近の労働衛生行政について」の2時間の講義では、「労働発生状況等」「全国労働衛生週間等」「産業医に関する通達の改正」「高年齢労働者対策」「転倒防止対策」「腰痛防止対策」「事務所衛生基準規則の改正」「電離放射線障害防止規則の改正」「溶接ヒュームによる健康障害防止対策」「石綿による健康障害防止対策」「職場における化学物質管理のあり方の見直し」のそれぞれについて広島県における現状を詳しく説明して頂きました。

労働発生状況等;全国的にも死亡災害は減少傾向にありますが、令和3年の休業4日以上の死傷災害は増加しており、60才以上の高年齢労働者による新型コロナ、第3次産業の転倒、道路貨物運送業の墜落・転落災害の増加が主な原因です。労働災害による裁判は年々増加しており、行政情報の開示請求の流れとして、請求人から行政へ開示請求→裁判所から行政へ送付委託→裁判所から行政へ文書提出命令としなり、裁判に使用されます。

全国労働衛生週間等;毎年9月を職場の健康診断実施強化月間とし、雇い入れ時の健康診断、一般定期健康診断、一定の有害業務に従事する労働者を対象とした特殊健康診断の実施の徹底を目的としています。広島県の一般定期健康診断有所見率は全国平均を毎年上回っています。職場におけるメンタルヘルス対策としてストレスチェックが義務化され、働く人のメンタルヘルスポータルサイト「こころの耳」ではメール・電話・SNS相談窓口を設置しています。

産業医に関する通達の改正;令和3年3月厚生労働省労働基準局長より、情報通信機器を用いて遠隔で産業医の職務の一部を実施することは差し支えないとの通達がでました。衛生委員会等で調査審議を行た上で、労働者に周知することが必要で、不正アクセス防止など技術的安全管理措置を講じること、産業医が必要と認める場合には直接対面を実施し、事業場の作業環境や作業内容等に大きな変更が生じる場合は産業医が実地で確認すること、労働者の健康障害の原因の調査及びさいはつぼうしのための措置は原則として、事業場において産業医が実地で確認すること、定期巡視も月1回は実地で実施することなどが明記されています。

高年齢労働者対策;令和2年3月厚生労働省労働基準局安全衛生部長より「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」いわゆるエイジフレンドリーガイドラインの通達が出され、主に腰痛防止のパワーアシストスーツ、熱中症対策の涼しい休憩場所の設置などの職場環境の改善、雇い入れ時及び定期健康診断の実施、勤務時間の変更や休暇の取得への柔軟な対応などの健康や体力の把握、健康や体力の状況に応じた対応などが明記されています。身体機能低下を補う設備、掃除の導入に当たってその費用の2分の1又は100万円の低い方を補助するなどエイジフレンドリー補助金制度があり、熱中症対策として休憩室にエアコンを設置したり、空調服を貸与したり、介護施設での自動浴槽やリフトの設置、新型コロナウイルス感染防止対策のためのHEPAフィルタによるろ過式、風量5m3/min以上の空気清浄機の設置などに適応されます。

転倒防止対策;転倒災害には、骨折など休業1か月以上の災害が多い、女性の被災が多い、50代以上が多い、労働災害全体の約25%を占めるなどの特徴があり、10月10日転倒予防の日に定めて、4Sの徹底(整理・整頓・清掃・清潔)、設備の改善、エイジフレンドリー補助金の活用、危険ステッカーの貼り付けなど危険のみえる化(可視化)、危険マップの作製、転倒予防体操の開発などに取り組んでいます。

腰痛防止対策;職場における腰痛には、40歳未満の被災率が高い、重量物の取扱作業などで多く発生、労働災害全体の約15%、介護などの保健衛生業で多く発生などの特徴がみられ、車いす移乗介助では前からできるだけ近くで抱え上げたり、座り直しは後ろから引き揚げるなど腰痛が発生しやすい作業動作をしないこと、リフト、スライディングボード、スタンディングマシーンなどリスクを下げるよう設備改善等を行うこと、腰痛防止体操を毎日行うことなどが推奨されています。You Tubeにも厚労省から社会福祉施設向け腰痛・転倒防止動画がアップされています。

事務所衛生基準規則の改正;昭和47年事務所衛生基準規則が労働省より発令されましたが、女性活躍の推進、高齢労働者や障害のある労働者の働きやすい環境整備についての見直しが検討され、机上の照度を150ルクス以上→300ルクス以上に、付随的な作業では70ルクス以上→150ルクス以上に、また常時10人以上の職場でのトイレ設置も男性用と女性用を区別して設ける原則となりました。

電離放射線障害防止規則の改正;厚生労働省では令和3年4月に改正電離放射線障害防止規則が施行・適用され、事業者は放射線業務従事者の眼の水晶体に受ける等価線量が、5年間につき100mSvおよび1年間につき50mSvを超えないようにしなければならなくなりました。

溶接ヒュームによる健康障害防止対策;アーク溶接により生じた蒸気が空気中で凝固した個体の粒子(粒径.1-1μm)である溶接ヒュームは、まだ何かは研究中であるが、人に対する発がん性があるグループ1に分類されており、ヒューム濃度は暫定的にマンガンの濃度で測定しています。令和2年4月溶接ヒューム等による健康障害防止措置が改正され、令和3年4月より順次施行されます。アーク溶接、アークを用いた溶断、ガウジング作業等の金属アーク溶接等作業において、特殊健康診断の実施、特定化学物質作業主任者の選任、毎日1回以上の掃除、全体換気装置等による換気、溶接ヒューム濃度の測定、有効な呼吸用保護具の試用、呼吸用保護具のフィットテストなどが令和3年4月より順次施行されます。

石綿による健康障害防止対策;改正石綿障害予防規則の概要として、令和3年4月より石綿工事の事前調査の方法の明確化が変わり、現地で部材の製品情報など確認する目視による調査が必要となりましたが、メーカーによる照明や成分情報などを照合したり、平成18年9月以降の製造年月日を確認することも必要です。令和5年10月より、特定建築物石綿含有調査者、一般建築物石綿含有調査者、一戸建て当石綿含有調査者、日本アスベスト調査診断協会に登録された者など資格者が分析調査を実施することとなりました。また事前調査結果は3年間保存義務があり、床面積80m3以上、請負金額100万円以上の改修工事では労働基準監督者への報告が必要になりました。

職場における化学物質管理のあり方の見直し;化学物質による労働災害は年間450件、約8割の原因となっており、法令による規制の対象外の物質によるものが約8割であり、日本も欧米並みに、危険性・有害性が確認されたすべての物質に対して国によるGHS分類し、危険性・有害性の情報の伝達、リスクアセスメントの実施、労働者が吸入する濃度を基準以下に管理するよう検討中であり、労働災害が多発し自律的な管理が困難な物質や特定の作業の禁止・許可制を導入し、5年後を目途に自律的な管理に移行することになります。

明日からも最新の知見を当院通院患者さまへお伝えしていきたいと思います。

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[2022.02.01] 基礎後期産業医研修会参加②


2021年9月26日(日)、広島県医師会主催令和3年度第1回基礎・後期産業医研修会午後の部へ参加しました。

マツダ株式会社安全健康防災推進部統括産業医の空閑玄明先生による「休復職支援の実際~産業医が日々直面する苦悩と歓喜~」の2時間の講義では、産業医として重要な休復職支援について3症例を提示しながらポイントを解説していただきました。休業発生はおよそ100人に一人程度であり、演者の勤務するマツダの従業員は2500人程度なので、年間250人程度の休業者が発生しているそうです。

1例目は脳出血で入院し手術後リハビリ中の48歳の男性社員についてでしたが、まずは病状についてできるだけ詳しく情報を集めること、就業規定を確認して休職できる期間や復職条件などを確認すること、これまでの業務内容、就労態様(夜勤や残業など)を把握したり、主治医へ診療情報提供依頼書を送って治療状況や後遺症などの残存健康リスクを把握すること、など情報収集が大切であるとのことでした。リハビリ後症状が固定した段階で店長として復職し、当面残業禁止、休日出勤禁止、出張禁止などの条件を徐々に緩和していき、経過を見てやはり店長としての職務が難しいようであれば事務職への異動を検討することとなりました。

2例目は休復職を繰り返す22歳の男性社員の事例でしたが、面談を繰り返して生活習慣指導を行ったりリワークを利用して不調への振り返り、コミュニケーションスキルの向上、復職後の状況を想定した訓練などを行ったり、家族と面談するなど、人を巻き込んでそれぞれの役割の分担、明確化を図っていきましたが、最終的には退職となったそうです。

3例目はスキルス胃がんを発症した45歳男性社員の事例でしたが、手術適応はなく化学療法を継続し、クール間での就労を検討していきました。通常骨折などの身体疾患の場合は治療終了後、リハビリ等含めて万全の状態に回復したのちに復職してもらうルールですが、治る性質のものではない疾患の場合は本人の職位・職級に見合う仕事を担当できるのであれば復職を認めます。チーム内のどんな作業もこなせるポジションである班長としての復帰は体力的に懸念あり、技能の伝承をするための道場で指導係として活躍の場をもってもらえると考えられました。また高度な医療を必要とし、大学病院などの総合病院を定期的に受診しなければならない状態と産業医が認めた場合、40時間/月を上限に無事故扱いの欠勤(無給だが評価に影響を与えない欠勤)を取ることが認められたり、その他治療費の支援、がん検診受診の補助など会社によってさまざまな支援制度がありますので、まずは会社へ確認することが重要です。

引き続き産業医科大学産業生態科学研究所境疫学研究室の藤野善久教授による「最近の職域における公衆衛生の知見~COVID-19流行における労働者の健康~・~職域における健康格差~」の2時間の講義を拝聴しました。

WHOの健康の定義は身体的・精神的・社会的に健康であること、と定義されており、たばこ、飲酒、肥満、運動、栄養、休養、ストレスなどの生活習慣リスク要因や、教育、雇用、住宅、交通、所得、連帯、相互扶助などの社会経済要因、平和、安全、経済的安定、人権、公平、社会正義などの社会基盤が重要な要素です。学歴、所得、社会階層、職種、雇用形態などと検診受診率や死亡リスク、主観的健康度やうつ症状などは相関関係にありますので、健康格差対策が産業保健の課題とも言えます。人間関係のよい職場では血圧が安定しやすい、コミュニケーションの希薄な職場ではメンタルヘルスを悪化させやすいなど豊富なデータを提示して頂きました。

またCOVID-19流行下における労働者の生活と健康に関して、インターネットモニターによる大規模な断面調査にて約3万人が回答したデータをまとめられ、企業や研究者への調査票の提供することにより社会貢献しておられます。

従業員数が多い企業ほどマスクの着用、体調不良時の出社制限、懇親会の制限、在宅勤務の推奨などを行っている傾向がみられ、在宅勤務が増える中、座卓を使用したり、静かでない、温湿度が快適でない、足元のスペースが狭い、机上が狭い、作業場所が暗い、集中できる部屋がないなどの労働機能障害は依然多く、腰背部痛、メンタルヘルス不適切な食習慣などが増える傾向が見られました。

また定期的に通院している労働者の11%が、受診することによる感染不安、スケジュール変更、医療資源のひっ迫、経済的不安定を理由にコロナ流行中に治療を中断しており、孤独感を感じている労働者では飲酒量が増加していたり、感染予防行動(マスク、手洗いなど)は地域の感染率と関連する、企業からの支援(両立支援)は労働機能障害を低減させている、などの傾向もあるそうです。

明日からも最新の知見を当院通院患者さまへお伝えしていきたいと思います。

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[2022.01.07] 基礎後期産業医研修会参加①


2021年9月26日(日)、広島県医師会主催令和3年度第1回基礎・後期産業医研修会午前の部へ参加しました。このたびは産業医資格を更新される先生方も参加され人数が多かったため、1Fホールにてソーシャルディスタンスを取って席指定されました。

産業医科大学医学部第一生理学の丸山崇先生による「生体リズムと産業医学」の2時間の講義を拝聴しました。2014年~「スタンフォード式最高の睡眠」の著者西野清治教授のおられるスタンフォード大学に留学され、基礎的なデータも提示しながらわかりやすく睡眠と健康について説明して頂きました。

REM睡眠を発見したスタンフォード大学のDr.William Dementが1993年Wake up Americaと題した報告書に、「生産性の低下、産業事故の増加など睡眠障害による経済損失は年額5兆円に上る」と試算しており、日本でも内山誠先生が医療費を含まず3兆4693億円の経済損失があると報告しており、欠勤や休職、遅刻早退は4割にとどまり、アルコール摂取、運動習慣の減少、睡眠休養不足により出勤しているにも関わらず十分にパフォーマンスが上がらない状態、すなわちpresenteeismによる生産性損失が6割以上であるそうです。

網膜から入った光情報は視交叉上核→交感神経節→松果体に伝達されたり、朝食を摂ることによって末梢時計遺伝子が活性化され、およそ15時間後に松果体からメラトニンが分泌され人間は眠りに入ります。よって就寝前にテレビやスマホなどブルーライトを発するものを見ているとメラトニンが分泌されずいつまでたっても眠れなかったり、深部体温が高いと睡眠に入りにくいため、入浴や運動、食事など体温を上げる行為は入眠する2時間前まで済ませておいて、入眠時には深部体温を下げておくとより成長ホルモンの分泌も増加し、細胞修復、アンチエージング作用が強まるとのことです。

ノーベル賞受賞者Milael Youngが発見したBMAL1, CLOCKと名付けられた時計遺伝子により、約24時間を周期としたサーカディアンリズムが作られ、睡眠覚醒、体温、メラトニン、成長ホルモン、コルチゾールなどが調整されます。

午後10時~午前5時の間、週1日以上または1か月に4回以上業務を行う労働者を夜勤=深夜業従事者と呼びますが、日本の交替制勤務者は約523万人(8.3%)にのぼっており、電気・ガス・水道・熱供給業、飲食店・宿泊業、製造業、運輸業、医療業に多く見られます。深夜業従事者では睡眠障害、胃腸障害、高脂血症・肥満、高血圧、心筋梗塞・脳卒中、乳がん・前立腺がんの発症率が高い傾向にあり、特に女性では月経周期の乱れ、妊娠率低下、流産・早産、胎児の成長不全(低体重児出産)、乳がんが多いとのデータがあるそうです。また大型貨物トラックにおける追突死亡事故は夜勤帯に多く、チャレンジャー爆発事故、アラスカ沖タンカー座礁事故なども夜勤帯のヒューマンエラーによるものだったそうです。

交代勤務/深夜労働の健康管理としては、
①勤務スケジュールの改善として、日勤→準夜勤→深夜勤など1日が長くなる方向でのローテーション(正循環・順方向シフト)を組むこと、
②勤務間インターバルでは終業時刻から次の始業時刻の間は原則11時間の休息時間を設けること、
③適度に仮眠をとることも重要で、深部体温の下がる3AM~4AMに90~120分仮眠をとるのが効率よく、夜勤後の仮眠は帰宅前に職場でとる、夜勤明けはサングラスをかけたり日陰を歩く、寝るときはアイマスク、遮光カーテンや二重カーテンで日光を避けますが、体内時計は日勤に合わせて固定することがコツなので、夜勤明けの睡眠は3時間程度にとどめたほうが夜深い睡眠がとれます。
④カフェインや睡眠薬は適切に使用するべきであり、覚醒の維持・促進に関与しているオレキシンは近年ナルコレプシーの原因であることも明らかとなりましたが、このオレキシンに対する受容体拮抗薬であるデエビゴは入眠効果、鎮静効果は弱いが依存性が極めて少なくせん妄を起こしにくい特徴があります。REM睡眠を増加させる作用もあるので悪夢で困っておられる方は使用しないほうがよいようですが、交替勤務で睡眠リズムが乱れがちな方には有用なケースもあります。

明日からも最新の知見を当院通院患者さまへお伝えしていきたいと思います。

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[2021.12.01] 基礎前期産業医研修会参加④


2021年8月1日(日)、令和3年度第2回基礎・前期産業医研修会午後の部へ参加しました。


マツダ(株)安全健康防災推進部産業医の山下潤先生による「作業管理」の2時間の講義では、現場でよくみられる腰痛症、手根管症候群(正中神経麻痺)、ばね指、デュケルバン病、腓骨神経麻痺について、実際の作業の動画を見ながら対策を教えて頂きました。

すでに講義のあった作業環境管理、健康管理とともに労働衛生の3管理の一つで、作業方法や作業のやり方の適切な管理を行うことも重要です。作業管理の3ステップとして、

①OWAS(Ovako式作業姿勢分析システム)により付加評価を行うなどの作業の現状を分析し、
②発生源対策、設備対策、作業改善、人的対策を検討して作業手順を確立し、
③教育訓練を徹底し守らせます。

労災認定で最も多い(57.8%)のが災害性腰痛で、重量物取扱い作業では人力の実では55㎏以下、体重の40%以下にすること、55㎏以上の重量物は2人以上で行わせること、はい付けまたははいくずし作業では肩より上で取り扱わないこと、身体を重量物に近づけ、重心を低くして背筋、腰部の筋肉、腹圧を加えて膝を伸ばすことによって立ち上がること、腰部のひねりを少なくし体ごと向きをかえることなどを指導します。またばね指、デュケルバン症候群、手根管症候群、テニス肘(上腕骨概則上顆炎)などの上肢障害、肋骨骨折、腓骨神経麻痺なども注目されており、作業現場の動画を見ながら対策を検討しました。


引き続き鎗田労働衛生コンサルタント事務所長の鎗田圭一郎先生による「産業医活動の実際」の2時間の講義では、じん肺、騒音性難聴、結核の集団感染などの対策を教えて頂きました。

「飲める特別有機溶剤(アルコール)と吸える特定化学物質(タバコ)にご注意を!」と従業員へ伝え、飲酒を控え禁煙するなどの生活習慣指導も行います。休業と復職を3回以上繰り返した事例を検討したところ、特徴としてほとんどの事例で朝の倦怠感と1年以内の再休業が認められ、最終的に双極性障害と診断される事例が多かったとのことで、その他、ディスチミアタイプ、自己愛性人格障害などのパーソナリティ障害や、アルコール依存症、自閉症スペクトラム障害などの精神疾患をベースにした適応障害の症例も紹介され、メンタルヘルスの重要性を実感しました。

明日からも最新の知見を当院通院患者さまへお伝えしていきたいと思います。

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[2021.10.01] 基礎前期産業医研修会参加③


2021年8月1日(日)、令和3年度第2回基礎・前期産業医研修会午前の部へ参加しました。

マツダ(株)安全健康防災推進部産業医の山下潤先生による「健康管理」の2時間の講義を拝聴しました。労働安全衛生法に規定されている産業医が行う健康管理の職務として、

①健康診断が挙げられます。一般健康診断には、必須の雇い入れ時健康診断、定期健康診断、高熱・低温・放射能や深夜業(10PM-5AM)などの特定業務従事者の健康診断、海外に6か月以上赴任する労働者の出国時・入国時に行う海外派遣労働者健康診断、休職従業員の検便などがあります。特殊健康診断にはじん肺健康診断、高気圧業務健康診断、電離放射線健康診断、鉛健康診断、本アルキル鉛健康診断、有機溶剤等健康診断、特定化学物質健康診断、石綿健康診断が法律で規定されており、令和3年4月より溶接ヒューム等が特定化学物質に追加されたり、最近では介護作業における腰部に著しい負担がかかる作業も行政指導で施行されるようになりました。

②職場復帰への産業医の関与として、健康情報の把握、職場環境等の把握、労働者との面接、人事部署などへの助言があります。

③過重労働対策として中小企業にも令和2年4月より働き方改革関連法案が施行され、残業時間の上限は原則として月45時間・年360時間、年次有給休暇も毎年5日取得が必要、非正規雇用労働者の基本給や賞与など不合理な待遇差が禁止となり、産業医による面接指導、事業者への意見書、労働者への生活・保健・受診指導などの事後措置も必須となりました。

④メンタルヘルスケアでは復帰支援において、1休職前中・2主治医の復職許可・3復職可否の判断復職支援プランの作成・4最終的な職場復帰の決定・5復職後の5つのステップがあります。復職可否の判断では、主治医の診断書をそのまま受け入れるのではなく、産業保健スタッフ、事業場内メンタルヘルス推進者が核となり、地域産業保健センター、上司、人事、主治医と連携を図りながら検討していき、病状回復=就労能力の回復ではないことがポイントです。職場復帰支援プランの作成では、模擬出金、通勤訓練、試し出勤などの制度を利用したり、障害者職業センターによる復職支援事業であるリワーク支援を利用することにより、生活リズムの構築、集中力の向上、ストレス対処スキルの習得、振り返り・目標設定、会社との調整などが行えます。最終的な職場復帰の決定は産業医の意見や就業規則などか事業者によっておこなわれます。復帰後は業務不可の調整、相談相手の確保、通院、内服が続けられるよう配慮、情報交換などで再発防止を行っていきます。


引き続き山下潤先生による「健康保持増進」の1時間の講義では、昭和54年に制定されたSHP(Silver Health Plan;中高年労働者の健康づくり運動)、昭和63年に制定されたTHP(Total Health Promotion Plan;すべての年齢の労働者を対象とした心と体の健康づくり)、平成14年に制定された健康増進法などの説明でした。

事業者は積極的に健康保持増進を推進する旨を表明し、目標の設定、体制の整備を行い、労働者に対する健康測定、運動指導、メンタルヘルスケア、栄養指導、保健指導などを行い、人材の確保、施設及び設備の整備、評価及び計画の見直しをしていきます。平成30年の健康増進法の一部を改正する法律では、労働者の健康障害防止という観点から受動喫煙対策に取り組むことが事業者の義務であり、労働者も事業者の指示に従うことが明記され、望まない受動喫煙をなくし、子供、患者などに特に配慮したり、施設の類型・場所ごとに対策を実施することとされました。また喫煙室はコロナ感染のハイリスク環境であり、一度に利用できる人数を制限したり、喫煙室を閉鎖することが望ましいとのことでした。

明日からも最新の知見を当院通院患者さまへお伝えしていきたいと思います。

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[2021.09.01] 基礎前期産業医研修会参加②


2021年7月11日(日)、令和3年度第1回基礎・前期産業医研修会午後の部へ参加しました。

三菱ケミカル株式会社人事部全社統括産業医の真鍋憲幸先生による「作業環境管理」の2時間の講義を拝聴しました。事業者は作業環境中の有害要因を工学的な対策によって除去し良好な作業環境を得るため、作業環境の測定を行い記録し必要な指導、指示を行わなければいけません。

有害要因には物理的、科学的、生物的な要因など様々ありますが、このセッションでは労働安全衛生法で規定されている原材料、ガス、蒸気、粉じん、酸素欠乏空気、病原体、放射線、高温、低温、超音波、騒音、振動、異常気圧、廃棄、廃液、残債物に絞って説明して頂きました。まずは厚生労働大臣が定めた基準値をもとに作業環境測定を行いますが、測定計画、すなわち

①デザインとしては、できるだけ不利になるよう、最も作業環境が悪い時間帯を選ぶことが重要で、空間的、時間的な変動の平均的な状態を測定するA測定、濃度が最も高くなると考えられる場所と時間で測定するB測定が基本です。

②サンプリングとしてはろ過補集法、液体捕集法、個体補修法、直接捕集法があり、デジタル粉じん計、ガス検知器など簡易測定機器を使用することもあります。分析も含めて第1種作業環境測定士に依頼したり、簡易測定機器しか使用できない第2種作業環境測定士に依頼することもできます。

③分析は作業環境測定基準、作業環境測定ガイドブックを用い、重量分析方法、原子吸光分析方法、ガスクロマトグラフ分析方法、吸光度分析方法などがあります。暴露限界には日本産業衛生学会の勧告値である許容濃度、ACGIH(アメリカ産業衛生専門家会議)の勧告値であるTLV、厚労省が定めた管理濃度があり、単位作業場所の95%以上の場所で期中有害物質の濃度の平均が管理濃度を超えない第一管理区分、作業環境管理の改善の余地があると判断される第2管理区分、濃度の平均が管理濃度を超える第3管理区分に評価されます。万が一漏洩事故が発生したら、鎮圧、拡大防止、シャットダウンなど即時事故対応を取ると共に、地域消防、警察へ指揮権移譲するなどの対応が必要とのことです。

引き続き真鍋憲幸先生による「有害業務管理」の2時間の講義では、上記の有害物質以外にも、

物理的要因として、紫外線、赤外線、レーザー光線、電磁場、電離放射線、高気圧(低気圧)、暑熱、高温物体、寒冷、騒音、低周波、超音波、振動などがあり、熱中症対策も最近のトピックスだそうです。

作業的要因として重量物取扱、腰部負担、振動工具取扱、引き金月工具取扱、VDT作業などがあり、トピックスとして介護施設、デイケアでの腰痛防止対策、VDT対策があります。

化学的要因として、化学物質、酸素欠乏空気、タバコなどがあり、受動喫煙防止対策が重要です。

生物的要因として、細菌、ウイルス、昆虫、獣毛、穀物粉、花粉などがあり、なんといっても新型コロナ感染症対策がトピックスです。

心理・社会的要因として、長時間労働、過重労働、ハラスメント、ワーク・エンゲージメントなどがあり、メンタルチェック義務化が始まりましたが、最近非常に増加していますので、別のセッションで扱うとのことでした。

①有害物・有害業務の除去・代替として暴露をできるだけ小さくすることが必要で、事業者が特定の化学物質を含んだ製品を他の事業者に出荷する際にSDS(Safety Data sheet;安全データシート)を添付しなければならず、安全衛生情報を記載し、事故や中毒に対応できるようにします。また国際連合が中心となって開発したGHS(Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals)により、世界的に統一されたルールに従って、化学品を危険有害性の種類と程度により分類し、一目でわかるようラベルで表示したり提供したりするようになり、ピクトグラムなどが用いられます。

②工学的対策では全体換気、局所換気などがあり、フランジ効果、プッシュプル型局所排気装置などが用いられます。

③管理的対策として従業員の健康診断を行ったり、危険・有害性について教育したり注意喚起を表示、作業場の4S(整理・整頓・清掃・清潔)の徹底などがあり、従業員一人一人のスキルが大切な砦、最後の砦です。

④個人用保護具の使用では呼吸用保護具の種類(吸気式とろ過式)や性能(粒子捕集効率を12種類に分類)から適切なものを選択する際、産業医だけでなく専門家の意見も聞いて皆で相談することが重要だそうです。 検定合格品を使用し、定性的フィットテスト、定量的フィットテストを行い、着用指導を日頃から実施しておくことが必要です。

盛り沢山な内容ですが、明日からも最新の知見を当院通院患者さまへお伝えしていきたいと思います。

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[2021.08.01] 基礎前期産業医研修会参加①


2021年7月11日(日)令和3年度第1回基礎・前期産業医研修会午前の部へ参加しました。日本医師会が認定する産業医になるには講習会を受けたり実地で経験を積むなどして50単位取得しなければなりませんが、この度の研修会で7単位を取得しました。まだまだ長い道のりですが、気長に勉強していこうと思います。

当院といつも連携してくださっている三菱ケミカル株式会社人事部全社統括産業医の真鍋憲幸先生による「総論」の2時間の講義では、産業医を引き受ける会社の大きさや仕組みをまず把握したり、「川上(基礎商品)」「川中(中間原料)」「川下(最終製品)」「4組3交代(24時間営業)」「3組3交代(週末休み)」「ライン(管理監督者)」などの業界用語やその業界の今後の流れも勉強しておくことが会社とのコミュニケーションでは重要であるとのことでした。労働契約と健康管理の在り方では、会社には従業員の安全や健康を確保するなど安全配慮義務がありますが、従業員にも会社の求めに応じて必要な労務が提供できるよう、業務遂行に必要な健康状態を保つよう努める責務、すなわち自己保健義務があり、産業医は従業員の自律を支援するというスタンスで最近若い世代にも増えてきている肥満、高血圧、糖尿病、肝障害などに対し治療を受けるよう促したり、禁煙、飲酒を控えるなど生活習慣の改善については20代の若い世代から教育していくことも重要だそうです。全年齢層で運動習慣も少なく睡眠不足とのデータも示され、当院でも引き続き生活習慣の改善を指導していこうと思いました。

鎗田労働衛生コンサルタント所長の鎗田圭一郎先生による「メンタルヘルス対策」の1時間の講義では、脳・心臓疾患による労災の請求件数、支給件数ともに年々減少しているのに反して、うつ病や適応障害などの精神障害による労災請求、支給件数は年々増加しており、出来事別のデータでは、2019年にパワハラ防止法が施行されたこともあり、上司からのパワーハラスメントや同僚からの暴行、いじめ、嫌がらせが上位を占めています。平成27年に労働安全衛生法が改正され、心理的な負担の程度を把握するためのストレスチェックが開始されましたが、受けたくなければ受けなくても構わないし、診断結果も本人の同意がなければ事業主は知ることができません。57項目からなる職業性ストレス簡易調査票のうち12項目を抽出して仕事のコントロールと仕事の量的負担、同僚の支援と上司の支援でグラフ化すると、高ストレス群を容易に発見することができ、全国平均と比較することによってその会社のメンタルヘルスの状態も把握できるとのことです。上司へ気軽に相談できる仕組み作りが大切であり、復職に際してはリハビリ出勤制度の確立やリワークの活用なども重要とのことでした。

明日からも最新の知見を当院通院患者さまへお伝えしていきたいと思います。

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